映画「マスター・アンド・コマンダー」にみる、昔も今も変わらないこと
Amazon Primeでマスター・アンド・コマンダーをみた。2004年公開だから17年前の映画だが、画像が美しく、古さを感じさせない。
まずは映画.comの解説から。
パトリック・オブライエンの海洋冒険小説「英国海軍の雄 ジャック・オーブリー」(ハヤカワ文庫)シリーズを原作に「いまを生きる」「トゥルーマン・ショー」のピーター・ウィアー監督が映画化。19世紀初頭、ナポレオン率いるフランスと交戦中の英国海軍。不敗神話を誇る伝説の英国軍艦長ジャック・オーブリーは、その情熱と誇りある生きざまを通じて、10歳の少年から老人までを含む総勢約130人の乗組員たちを率いていく。
2003年製作/139分/アメリカ 原題:Master and Commander: The Far Side of the World
[人間と微生物との闘い]
本編で何回か出てくる手術のシーンが興味深かった。19世紀初めは手術するのに、手術器具の滅菌もせず、術野の消毒もなく、ほぼ麻酔もなかった(少し朦朧とする程度)。腕を骨折すると切断し、頭蓋骨を切除して血種を取り除いた後は金具で蓋をする。これがこの時代の最先端の医療技術だったのだろう。準主役の船医が「術後の感染症で兵士が死んだら、戦死したと思うようにしている」と言っていた。細菌がまだ発見されていないのだから、仕方がないのだが、手術の腕をいくら磨いても助けられないのは悔しかったに違いない。
この時代から、約200年経過した。いまだに微生物(細菌とウイルスなどを含む)が我々の敵だ。微生物を撲滅できる日は来るのだろうか。僕が思うに、微生物は地球上からいなくなることはなく、撲滅できる日は来ないだろう。でも、ワクチンを作成するスピードは速くなるに違いない。今回の新型コロナワクチンを作るのに1年かかったが、もし1か月で作成可能となれば、パンデミックになる前に封じ込めるだろう。ワクチン作成に1年と聞いて、素晴らしく速くなったとは思ったが、もっともっと速くなってほしいものだ。
[人の動かし方]
戦闘の合間でただただ暑く、風が吹かないため帆船が進まず、乗組員たちの士気が下がっている中、こんなシーンがあった。
(ネタバレあり)
まだ10代の若い士官が、仕事のミスを部下である水兵達にとがめられてしまう。気の弱い士官は反論もできず、いわば「部下に舐められた上司」の状態となってしまった。そして、事件が起こる。甲板上の狭い通り道で、年上の生意気な水兵とその士官がすれ違い、わざと士官の肩にぶつかった。謝りもせず通り過ぎようとした水兵に、その士官は怒ることもしなかったのだ。それを偶然見ていた艦長が皆んなの前で怒鳴り、水兵に鞭打ち刑を与えた。自分のせいで鞭打ち刑を与えてしまったと思った士官は、部下の水兵達の仕返しが怖くなり、指揮をとることもできず、自ら命を絶ってしまう。戦死ではない理由で士官の一人を失うことで、艦長は反省し、部下に対する言動を変えていく。
軍隊でなくとも、会社などの組織でも起こりうる事例だと思う。言うことを聞かない平社員をもつ、少し出来の悪い部長。社長が見かねて、皆んなの前で平社員を怒鳴ってしまう。そして部長にも注意する。こうなると、一番つらいのは中間管理職である部長である。社長は部長のことを思って行動しても、逆に部長を追い詰めることがあることを知っておいた方がよい。教科書的には、社長は皆んなの前で怒鳴るようなことをせず、社員と部長を一人ずつ呼び出して注意するのが良いとされるが……。軍からの任務を遂行することを最重要とする艦長、会社の利益を伸ばすことを使命とする社長。艦長も社長も即断即決が求められる環境の中で、一人ずつ呼び出して注意、なんて悠長なことができれば、苦労はしないか。